2015年11月12日

【本の紹介】 ユキは十七歳 特攻で死んだ

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 書 名 ユキは十七歳 特攻で死んだ
   子犬よさらば、愛しきいのち
 著 者 毛利 恒之
 出版社 ポプラ社 (ポプラ文庫)
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この文庫本の表紙は、鹿児島県南さつま市にある万世特攻平和祈念館に展示されている「子犬を抱く少年兵」という有名な写真です。少年たちは17歳と18歳。笑顔で子犬を見つめる眼差しにはまだ初々しさが残っています。
しかし・・・信じられないことに、この写真は、彼らが特攻隊として出撃する予定時間のわずか2時間前に撮影されたものなのです。

子犬を抱いてカメラを見つめる中央の少年。彼が栃木県桐生市出身の17歳、荒木幸雄伍長です。この本は、彼が空に憧れてパイロットを目指し、15歳で難関の陸軍少年飛行兵試験に合格してから特攻出撃の日を迎えるまでの日々を、日記をもとに克明に追っていきます。
戦況は刻一刻と悪化していき、パイロットの養成が急がれていました。飛行兵の養成期間は半減され、休みもなく毎日が血を吐くような訓練の日々が続きました。そんな練習中に彼が同期生につぶやいたのは「できたら、おれ、工業専門学校に行って、航空技術者になりたいんだ」という夢でした。
しかし時代は彼の夢を踏みにじります。飛行兵にあこがれて陸軍少年飛行兵学校に入学してからわずか1年8か月後。 17歳の荒木幸雄伍長が参加した初めての戦闘は、二度と戻ることのない特攻隊としての出撃でした・・・。

 万世基地の隊員だった稲村七郎さんは自著の中でこう述べています。「特攻隊の人達は、若い日、大空を飛ぶことに憧れ訓練したもので、決して特攻隊にゆくために飛び始めたのではない。いつの日か平和な時代が来た時、大空を飛んでみたいという思い入れが皆にあったのだ。」と。
まもなく自分はこの世から消えていく、そんな状況でも子犬を愛しんだ若人たち。優しさに満ちた彼らの笑顔を、平和な時代に咲かせられなかったことが残念でなりません。

(我孫子市平和事業推進市民会議 M

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