2022年9月11日

中学生広島派遣報告(引率者:大学生原直輝さんによる報告)

  私は、2022年度中学生広島派遣にて、平和事業推進市民会議代表として中学生の引率をさせて頂きました。今年度は85日から7日の3日間で実施し、2年ぶりに広島平和記念式典にも参列することができ非常に実りあるものとなりました。 

 1日目は、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の見学と平和記念資料館の見学を行いました。我孫子からの長い移動を終えたばかりではありましたが、平和の祈りに包まれた広島を真剣な眼差しで見る姿から、平和に対する強い意志を感じることができました。

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は、原爆死没者の尊い犠牲を銘記し、恒久の平和を祈念するとともに、原爆の惨禍に関する全世界の人々の理解を深め、被爆体験を後代に継承することを目的として、被爆地である広島に設置された施設です。施設の中にある平和祈念・死没者追悼空間では、当時、被爆前に撮影された家族写真や友人との集合写真などが展示されており、そのほとんどが笑顔で写っていました。

派遣中学生の一人は、「笑顔で写っている写真は幸せに見えるはずなのに、原爆がこの後落とされてしまうと考えると心が締め付けられるような悲しい気持ちになった。」と感想を聞かせてくれました。私たちと同じような日常を、何気ない笑顔や幸せを奪った核兵器の憎さを改めて痛感した瞬間でした。

また、遺影コーナーではモニターに我孫子市原爆被爆者の会の会長を務められた宮田さんの遺影も映し出されました。私は平成28年度長崎派遣の際、事前学習会で宮田さんから貴重なお話を頂きました。宮田さんから受け継いだ意志は私を含め、派遣中学生はしっかりと受け継がなければと強く感じました。

 平和記念資料館の見学では、それぞれがじっくりと過去に起きた悲惨な現実に目を向けていました。積極的に写真を撮ったり、メモをしたりととても意欲的に活動していました。被爆の実相を伝える一つ一つの展示に足を止め、各々が心に様々な思いを刻み込んでいるように見えました。派遣中学生の皆がその場で感じ、考えたことを大切にこれからの活動へと生かしてほしいと思います。

平和記念資料館の見学

 夜に行われた反省会では、一人一人が感じたことを自分自身の言葉で表現しようとする様子が見られました。自分の考えはもちろん、仲間の感じたこと考えたことにもしっかりと耳を傾けられており、とても有意義な派遣になっていると実感できました。議論のまとめの中で、「簡単に一言で軽い言葉で言い表すことはできない」という意見が上がりました。言葉にならないほどの衝撃を目の当たりにしながらも、我孫子市の代表として意欲的に活動している姿を見ることができ、とても嬉しく感じました。
 

 2日目は平和記念式典に参列した後、平和記念公園と本川小学校平和資料館を見学し、おりづるタワーと広島城を訪れました。被爆から77年が経った86日の午前815分に広島で黙とうを捧げるという貴重な機会を得ることができました。広島のこども代表の平和への誓いで「未来は創ることができる」といった言葉がありました。平和な未来を創るため、広島・長崎派遣での学びを広げる義務が私たちにはあります。改めて平和な未来を創るために積極的に活動していこうと考えました。

平和記念式典で黙とう

 本川小学校平和資料館は被爆当時の状態をそのままの形で保存し、資料館としている建物です。1日目に平和記念資料館で見た展示物とは違い、原爆の被害を受けた建物に足を踏み入れたことでより一層原爆の実相に迫ることができたと思います。私はまるで77年前に引き戻されたような不思議な感覚になりました。派遣中学生は星野市長がしてくださる資料の説明に身を乗り出す勢いで積極的に話を聞いたり、質問をしたりしていました。1日目を経てさらに意欲的な姿勢を見ることができました。

 おりづるタワーと広島城では、折り鶴を作り「おりづるの壁」から投げ入れたり、写真を撮ったりしながら互いの仲を深めることができていたと感じました。どちらの施設からも広島市街を一望できる展望デッキがありました。原爆投下の日から77年経った今日、こうして素晴らしい街がある復興した景色に感動しました。そして、都市化する中でも「ノーモア・ヒロシマ」の象徴である原爆ドームや平和記念公園などが形あるものとしてこれからも残り続けてほしいと強く願いました。 

 3日目は、平和記念資料館を再度見学した後、被爆体験講話を聴講しました。現在公表されている被爆者の方々の平均年齢は84.53歳となっています。年々広島・長崎で起きた惨劇を語り継ぐことのできる方の人数は減っています。今回私たちに講話をして下さった方は、壮絶な被爆体験を語ることが辛くこれまで身内にすら被爆当時の話をしたことがなかったそうです。しかし、今年4月に、生き残った被爆者として後世に伝えなければと被爆体験講話をする決断をしたとのことでした。貴重な機会を大切にしようと、派遣中学生は必死にメモをとっていました。被爆者の方から原爆投下時の状況や、その後の悲惨な出来事について聞くことができました。質疑応答の際には、派遣中学生の全員が挙手し積極的に参加していました。この貴重な機会を体験できた派遣中学生には、是非今後も継続して平和活動に触れていってほしいと思いました。 

被爆体験講話(講師:内藤愼吾さん)

 今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を徹底したうえで、例年に近い形で広島派遣の全行程を終えることができました。派遣中学生の平和や戦争について積極的に学ぼうとする姿にとても感銘を受けました。この3日間を含む、派遣までの道のりやこれからの活動は派遣中学生を大きく成長させ、心に残る体験になったと思います。また、この派遣で出会った方々や仲間への感謝を忘れず、これからも大切にしていってほしいと思います。

 現在世界では、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、紛争や戦争の計画がなされています。非核化が平和のすべてではないという厳しい現状になりつつあります。核のない世界はもちろんではありますが、それ以上に私たちは「平和」という定義をもう一度考え直す必要があります。日々流転する時代を様々な角度から見つめ、平和な未来を創るために活動していきたいと思いました。

原爆ドーム前で

 派遣中学生にはこれからも「平和の集い」や「リレー講座」を通じて、彼らなりの視点から「平和」について伝えていってほしいと思います。

 最後に星野市長や丸教育長をはじめ、我孫子市役所企画政策課の皆さんや派遣中学生、派遣に際してご協力頂いた全ての方々に感謝の意を表し、引率者レポートとさせて頂きます。 

(平和事業推進市民会議副会長 原 直輝)