2015年7月8日

「焼き場に立つ少年」とジョー・オダネル氏

坂井貴美子氏(故ジョー・オダネル氏夫人) 提供
 この写真を初めて目にした時、何も知らない私はただ微笑ましく感じました。戦時中、忙しい親の代わりになって幼い弟を負ぶってあやしている真面目そうな少年。それにしても弟がずり落ちそうだなと。
しかし・・・写真の解説を読んだとき、私の体を衝撃が走りました。 

この写真は、従軍カメラマンのジョー・オダネル氏が原爆投下後の長崎で撮影したもの。タイトルは「焼き場に立つ少年」。
 少年は亡くなった弟を焼いてもらうために、急ごしらえで作られた焼き場の前に立ち、順番を待っていたのです。
年の頃は10歳位でしょうか。直立不動で両手をぴんと伸ばし、口を真一文字に結んでいます。順番がきて弟の遺体が焼かれている間、少年は炎を食い入るように見つめ、噛みしめられた唇からは血がにじんでいたそうです。
 火が静まると少年は一人沈黙のまま、焼き場を去って行きました。その時オダネル氏はその少年の肩を抱いて話しかけたい衝動に駆られたと後に回想しています。 

 オダネル氏は広島・長崎の状況を目の当たりにして、原爆のあまりの惨劇に大きなショックを受けました。そしてアメリカに帰国してからは個人で隠し撮った写真を、40年以上の長きにわたって屋根裏のトランクの中に封印したのです。
 しかし反核運動の彫像に偶然出会ったことをきっかけに、1990年、オダネル氏はトランクを開け、原爆の惨状を世に訴えることを決意しました。 

 2007年、オダネル氏は85歳の生涯を閉じました。奇しくもその日は8月9日。長崎に原爆が投下された日でした。
 美智子皇后陛下はその年の10月、お誕生日の記者会見でオダネル氏の死に関して触れ、「焼き場に立つ少年」がいまも目に残っており、世界平和を願わずにはいられませんとコメントされました。 


(我孫子市平和事業推進市民会議・M男)

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