広島・長崎派遣中学生による平和の授業「リレー講座」。小学生の皆さんはどのような反応を見せているのでしょうか。今回は11月7日に湖北小学校で行われた、第7回リレー講座を見学しました。
(我孫子市平和事業推進市民会議 M男)
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6年1組 講座風景 |
「私はこの小学校を卒業しました。その頃大好きだった遊具がそのままなのでとても懐かしく思います。」講師の今和香菜さん(平成21年度派遣中学生)が笑顔で語り始めました。 「へー、今日の先生は私たちの先輩なんだ。」 子供たちの緊張がほぐれていきます。6年1組は他に派遣OB 3名がアシスタントとして補佐し、隣の6年2組でも4名の派遣OBが授業を行っています。
授業は、大型ディスプレイに映像を映しながら原子爆弾について説明していきます。
「では問題です。世界170か国のうち、原爆が落とされた国は何か国でしょうか?」
「Aの 1か国だと思う人?」 ・・・クラスの半分が手を上げました。
「Bの 10か国だと思う人?」・・・これもほぼ半分。 Cの 100か国も1人が手を上げました。
「正解は、Aの1か国です。」 「えー!」と驚きの声が上がります。
「日本は、原爆を受けたただ1つの国なのです。」
「広島では、たった1発の原子爆弾で12万人が亡くなりました。我孫子市の人口が13万3千人なので、だいたい我孫子市全員と同じ人数が亡くなったんだよ。」アシスタントの話に子供たちが真剣に耳を傾けます。
「原子爆弾が爆発した時、地上の温度は3000度から4000度になったと言われています。ちなみに、人がやけどするのは150度。1500度では鉄が溶けます。」 「えー! うそー! そんなに熱いの⁉」 子供たちが息を飲みます。ディスプレイには、がれきと化した爆心地。焼けただれた三輪車。溶けた弁当箱。 子供たちの目が映像に食い入ります。
「あなたが生きるうえで、幸せなことは何ですか? 考えてみて。」講師が問いかけます。
「家族と食事すること。」「友達と遊ぶこと。」子供たちが答えます。
「そうですね。でも、派遣でお会いした被爆者の方はこう言ったのです。」 ディスプレイは年配の男性を映し出し、その後真っ白になりました。 講師が男性の言葉を伝えます。
「私が幸せなことは・・・」
「息ができることです。」 子供たちは信じられないという表情。
「息ができること、生きていること。被爆者の方はそれが幸せだとおっしゃったのです。」
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6年2組 講座風景 |
最後に「平和な世の中にするために今日から自分たちができること」をグループで話し合って発表してもらい、リレー講座は終りました。
「いじめをしない」「人の意見を聞く」「けんかをしない」・・・
その意見がとてもシンプルだっただけに、子供たちがこの授業を通じて強く感じたこと、さらには平和というものの本質がそこに凝縮されているように私には思えました。
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(後記)
「日本は唯一の被爆国」。大人たちが常識と思っていることでも、子供たちは知らない。
そんな当たり前のことを強く感じた1日でした。我々が第一次世界大戦を良く知らないように、子供たちにとって70年前の戦争は、江戸時代と同じく大昔の事。教科書の中のことなのでしょう。
戦後70周年記念事業として始まった「リレー講座」。 タスキを渡すように世代間で負の記憶と平和の大切さを繋いでいくこのような活動が、今後さらに重要度を増していくのだと思います。