書 名 14歳 <フォーティーン>
著 者 澤地久枝
出版社 集英社(集英社新書)
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この本は、今年の6月に出版されました。
この本に登場する「少女」は、著者である澤地久枝さん自身。
少女は、終戦を満州(中国東北部)の吉林で迎え、一年間の壮絶な難民生活を経てようやく、一家で日本に引き上げました。
14歳になった「著者の弟の孫」に、戦争とはどういうことかを伝えたいと思ったことから書いたというこの本の最後に、著者は以下のように書いています。
戦争の歴史がくり返されることはたえられないと思う。
十四歳の子のために、七十年前に十四歳であった少女の物語を書こうとした。そこを出発点にして、血のつながるひとたちが、どんな戦争の時代を生きたか、語ってゆこうとした。
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しかし遠い日の戦争が、つぎの世代の不幸にむすびついていることをいま、わたしは気づいた。
老いのくりごとではない。
少年に、わたしはもう一度話をする。この本を書いたことが、無意味にならないことに希望をつないで。
満州事変(1931年)以降、およそ30万の日本人が満州開拓移民として、満州、内蒙古、華北に入植。終戦直前ソ連参戦時に取り残され、ソ連に捕えられてシベリアに抑留された人、引き揚げの途上で命を落とした人も数知れず、無事日本に帰国しても国内の生活基盤を失っていたために辛酸を舐めた人が少なくありませんでした。
4歳で家族とともに満州に渡った著者の思春期も、戦争によって大きく踏みにじられました。
戦中体験を今の若い世代に伝えることは「ほとんど不可能に近い」と感じながら、「満州から引き揚げてきた十四歳から十五歳の日々をいま、書いた方がいいようにおもうようになった」という著者。
引き継ぐべき世代である私たちは、しっかりと耳を傾けていきたいと思います。
(我孫子市平和事業推進市民会議 恒)