書 名 報復ではなく和解を
著 者 秋葉忠利
出版社 岩波書店(岩波現代文庫)
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著者 秋葉忠利氏は、数学者として広島修道大学・広島大学などで教鞭をとった後、衆議院議員を経て、1999年から2011年まで広島市長を3期務めました。
この本には、核の脅威に対してこれまで大きな抑止力となってきた被爆者が高齢化している今、平和を願うだけではなく、具体的に核を廃絶し平和を引き寄せるために、私たちはどうしたらよいのかを考えるヒントと勇気が、多く書き込まれています。
9・11同時多発テロ以降、あってはならない「平和のための戦争」が公然と叫ばれ、実行(イラク戦争など)されるようになった21世紀にある私たちにとって、「想像力を駆使することで未来の世界のデザインを描き、その実現のためにはいくつものハードルがあったとしても、きちんと目標を掲げて努力することが大切」ということを、著者は、リンカーン大統領就任演説の
“The Better Angels of Our Nature (私たち自身の中にあるよりよいもの)” を引用するところから始めて、そこにある私たちの希望と可能性を具体的に挙げて、説いています。
著者が説く「報復から和解へ」のパラダイムシフトの可能性から、以下の二点を紹介します。
①
自分たちを「少数派」だと思っていた人たちが、インターネット(SNSなど)でつながることによって、実は「多数派」であることに気づき始めたという変化の可能性
これまで報道などにもなかなか取り上げられることのなかった平和を求める草の根の声がSNSなどを通してつながるようになり、実は私たちは多数派だったと知ることによって、世界に届く草の根の声が力強く広がってきています。
②
国家単位の世界から都市単位の世界への思考の枠組みを変えることによる可能性
国政ではなく地方自治の観点、国ではなく都市(最小の行政区画:市町村区)の単位の世界の思考に枠組みを変えることによってパラダイム転換の可能性が生まれます。市民との距離が近く、市民の多様性を包含することによって創造・文化・エネルギーを生みだす都市だからこその可能性があります。
著者が広島市長時代に推進した平和市長会議(現在の平和首長会議)の活動や、国内外の大学に開設を広めた「広島・長崎講座」の取組みもこれに連なるものなのだと思います。(昨年、中央学大学の「平和学講座(川久保文紀准教授担当)」も「広島・長崎講座」に認定されました)
「未来の世界のデザインを描き、努力すること」、それが我孫子で私たちが取組み、伝えていくべきことなのだと思います。
(我孫子市平和事業推進市民会議 恒)